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『WFM よこはま 7号』 世界連邦建設同盟横浜支部会報 1997年9月25日発行に掲載された論文

 
「世界連邦運動の現状」

世界連邦建設同盟・本部会員 

鈴木俊雄


 世界における世界連邦運動の現状、特にインターネット上の現状について書きたいと思います。世界連邦運動または世界政府運動は基本的に、二つの道が考えられます。一つは、国連を改善して世界連邦へと発展させるもので、もう一つは国連とは別に世界連邦を樹立しようとするものです。世界連邦建設同盟は世界連邦運動 WFM, World Federalist Movement の日本支部であり、前者に属します。後者は、国連に期待せず、そのシステムの外で世界連邦を樹立しようとするものです。
 世界連邦建設同盟については、皆様よくご存じなのであらためて書くまでもないと思いますので、ここでは後者に属する幾つかの運動について紹介します。以下に示すホームページへは、後述する私のホームページにリンクがもうけてあります。
 先ず、インターネット上に,「草の根世界政府」 Grassroots World Government と言うホームページがあります。このホームページには、メーリングリストがあります。メーリングリストとは、このリストに登録してある人のE−メールが、登録者のところに自動的に転送されてお互いにメールにより討論や情報交換が出来るものです。
 「世界市民ウエブ」 World Citizen Web では世界市民のパスポートを発行しています。すでに40年も発行しているとのことです。
 T. Gilman 氏のホームページには世界政府の憲法草案が載っています。これは世界憲法及び議会の協会 WCPA, World Constitution and Parliament Association が作った憲法草案です。この草案は関係者が50年かかって作ったものだそうです。
 ホームページではありませんが、インドの活動家 P. K. Agrawal 氏は世界市民の登録を受け付けています。これは、今年から始めたものです。E−メールは pka21715!telco.co.in です。
 このほかにもホームぺージはありますが、これらインターネット上から得られる情報を総合すると、次のように言えるように思います。それは、アメリカは世界連邦を作ると、人口的に中国やインドにはるかにかなわないので、もはや主導権を握れないから、アメリカは世界連邦の樹立の運動を促進しないであろうと言うことです。日本の江戸時代で言えば、アメリカは徳川幕府です。幕府は、明治政府を自分から作ろうとはしませんでした。それでは、江戸時代の薩摩や長州などの、後の明治政府を作る国は現代の世界ではどこの国でしょうか。それは、主にアジアの国々だと思われます。アジアは世界の人口の半分を占めています。もし、世界連邦が作られるとしたらその主導力はアジアになると思われます。アメリカ主導の状態では、いつまでたっても進まないでしょう。アジアの国々が協力し合った時、世界連邦運動は促進されると思われます。
 そこで、私も個人のホームページ開設し、自分の論文を掲載し、日本語と英語で世界連邦運動のプロセスを提案しています。ホームページのタイトルは「世界政府研究所」で, URL(インターネット上の住所)は、http://www.justnet.or.jp/home/toshio-suzuki/jwelcome.htm(1997年11月の時点ではhttp://www3.justnet.ne.jp/~toshio-suzuki/j-index.htm)です。そのホームページに「世界政府のための国際政党」と言う論文が載せてありますが、その内容を要約してみたいと思います。
 先ず、世界連邦を樹立し維持する力はどんな力であるか、私の認識を示します。言うまでもなく、世界連邦を樹立し、維持するのには偉大な力が必要です。ソビエト連邦はそれを維持する力を失ったから崩壊したと考えられます。このように、国家がどんなに強大であろうと、それを維持する力がなければ維持することはできません。
 それでは、どんな力が世界連邦を樹立し、維持できるのでしょうか。それは、軍事力でもなければ経済力でもありません。それは、精神的なものです。それは、人々の支持です。人々の支持のみが世界連邦を樹立し、維持できると思われます。多くの歴史的な変化がこれを示しています。根本的に、人々の支持により古い権力が倒され、新しい権力が樹立されて来ました。
 それでは、如何にすれば人々の支持を得られるでしょうか。私の見解では、支持は自分達の代表者を直接、選挙で選ぶシステムに集まります。例えば、二院から成る世界議会です。各院は1,000人のメンバーから成り、そのメンバーは人口に比例して選ばれます。暫定的にそれを「北院」と「南院」と呼びましょう。もし、世界の人口が60億人とすると、メンバーの数は1,000人ですから600万人につき1人のメンバーが選ばれます。それ故、もし中国が12億人を擁しているとすると、中国は200名のメンバーを各院に送ることができます。インドが9億人とすると、150名のメンバーを送ることができます。アメリカは2億6,000万人とすると、43名です。日本は1億3,000万人とすると、22名です。このような議員配分は、アメリカや日本のような国には容易には受け入れられないでしょう。しかし、それは最終的には支持されるでしょう。
 これらのことを考えると、世界連邦を樹立するプロセスは基本的に、二つの道があります。一つの道は、国際連合のシステムの中でそれを試みる道です。もう一つの道は、国際連合の外でそれを試みる道です。
 前者の道では、WFM(WORLD FEDERALIST MOVEMENT)の様な運動が重要な役割を果たすでしょう。WFMの様な運動と国際連合がそのプロセスを促進するでしょう。この道においては、多年にわたって多大な努力が成されてきました。
 後者の道は、人々の支持に基礎を置いたものです。第一のステップは、世界連邦を樹立する事が主要な政策である国際政党を作ることです。各政党は、1国の本部政党と各国の支部政党から成ります。ここでは、政党の数は二つと仮定し、暫定的にそれらを「世界党」と「地球党」と呼ぶことにします。二つの政党の共通点は、『各政党は一つの国に本部政党と各国に支部政党を持つ。主要な政策は、世界議会のメンバーを直接選挙する選挙を行うことである。メンバーの割り当ては、個々の国の人口に比例する。初期の段階では、世界議会は立法権を持たない諮問会議である。』ということです。各政党は、世界連邦についてのその主要な政策を強調し、選挙を戦います。この様にして、例えば日本において世界党が政権をとれば、選挙のための法律を制定し選挙を行います。選ばれるメンバーの数は、その人口に比例して、22名です。他の国、例えばアメリカにおいては地球党が政権を取るかもしれませんが、主要な政策は同じです。選挙を行い、43名のメンバーを選びます。個々の国から選ばれた代表者は、たとえ選挙がたった2カ国において行われたとしても、世界議会の一部を構成できます。他の国々 は、その人口に応じて選ばれた代表者を送ることによって、後からこの世界議会の一部に加わることができます。この様にして、完全な世界議会のほんの小さな一部から真の世界議会へ発展する事ができます。初期の段階における世界議会は、欧州議会のように立法権を持たない諮問会議であるべきです。言うまでもなく、初期の段階において立法権を付与する事はあまりにも危険です。たとえ、世界議会は立法権がなくても、それにふさわしい支持を受けるでしょう。なぜならば、メンバーは人々によって直接選ばれたからです。世界議会は、適切な段階で、立法権を得るべきです。世界連邦の憲法は、立法権を持った世界議会が設立されてから作れます。このプロセスが可能であるか否かの疑問に対する答えは、人々の支持によって与えられるでしょう。いかなる、思想も最終的な結論を与えることはできません。
 上に書いた世界連邦への二つの道のうちどちらが可能でしょうか。前者の道では、アメリカは支配的です。拒否権を用い国際連合の事務総長を決定でき、国際政治において指導的な役割を演じています。世界連邦についての多くの勧告や懇願が国際連合に提出されたのに関わらず、国際連合は世界連邦の設立に向かって動きません。これは、アメリカがこの方向に動かないからであると思わます。アメリカは、真に民主的な世界連邦では支配的ではあり得ません。それ故、世界連邦への運動を促進しないでしょう。この状態が永く続きすぎれば、状況は後者の道を通って動くでしょう。そして、世界党や地球党のような国際政党が必要になるでしょう。
 以上が、私のホームページに掲載されている論文の要旨です。現在の私の活動は、WFM加盟の各国の支部、インターネット上の世界連邦関連のホームページ、世界連邦運動関連の各国の団体などに自分の論文を送って理解を深めてもらっている段階です。これまでには、E−メールで、インド人、日本在住のスーダン人、アメリカ人などから問い合わせがありました。やりとりした、メールはホームページで公開されています。しかし、具体的に国際政党を作ろうと言う動きは出ていません。また、私のホームページでも、上述のメーリングリストの準備をしています。
 私が、論文で提案している国際政党による世界連邦樹立のプロセスは、国連を改善して世界連邦を作ろうとする世界連邦運動のプロセスと違いますが、両者は対立するものではなく、協調して行くものです。世界連邦ができたら、当然、国際政党は必要になります。